日本の地域のデザイン活動に焦点を当てた企画展「山水郷のデザイン2 - 3つのコンヴィヴィアリティ」を開催
GOOD DESIGN Marunouchi(東京・丸の内)にて7月15日(金)より
2022.07.04
公益財団法人日本デザイン振興会
GOOD DESIGN Marunouchi
公益財団法人日本デザイン振興会が運営するデザインギャラリー、GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)は、2022年7月15日(金)より8月14日(日)まで、展覧会「山水郷のデザイン2 - 3つのコンヴィヴィアリティ」を開催します。
■ 企画概要
当ギャラリーが2020年よりオンライン配信する、日本の自然豊かな地域に根ざした活動を行うクリエイターとのトーク番組「山水郷チャンネル」の展示企画として、昨年に続いて開催する展覧会です。
今回は、うなぎの寝床(地域:九州ちくご)、真鶴出版(同:神奈川県真鶴町)、ドット道東(同:北海道道東地区)の三者と共に、コンヴィヴィアリティ*をテーマにそれぞれの地域と活動をご紹介します。
「山水郷」は、山水の恵み豊かな地域と、そして人と人がつながり生まれる郷(さと)を意味する造語です。
日本各地の山水郷で、土地で共に生きる仲間と、そこでしかできない生業や生き方を愉しみながら生み出す、そんなコンヴィヴィアルなデザインの力が、日本を少しずつ変えはじめています。
本展では、その土地に暮らし活動する彼らデザイナーの目線、思考、そして言葉によって、活動の内容とともに、それぞれの土地で彼らが見出しているコンヴィヴィアリティそのものを伝えます。
さまざまな方が本展を通じてコンヴィヴィアルというあり方に触れ、実践への糸口としていただければ幸いです。また、三者の生き生きとしたデザインにもご注目ください。
*宴会や陽気さという意味もあるが、原義は「共に生きる」。思想家のイヴァン・イリイチ(1926-2002)が「関わりの中で育まれる個の自由や生き生きとした喜び」という意味で用い、コンヴィヴィアルな世界の回復こそが、産業化され過ぎた現代社会の桎梏から逃れるための鍵だと主張した。
■ 展示内容
展示1:うなぎの寝床「九州ちくごの地域文化とものづくり」
Editor: 株式会社うなぎの寝床
2012年7月に活動をはじめた、福岡県八女市という場所を拠点に活動する地域文化商社。「つくりて」と「つかいて」の間に立ち活動を続けている。地域資源には人・物・技術・物、土地性、様々な背景と文化がまざりあっており、それを顕在化させ伝えていく生態系をを構築していく。地域で発信できる拠点としてのお店、都市部での店舗展開、宿、本屋、ツーリズム、企画、制作、ニョロニョロと蠢きながら活動中。
展示2:真鶴出版「まちを歩いて、紙を編む。」× シオヤプロジェクト
Editor: 真鶴出版
「泊まれる出版社」をコンセプトに、書籍の制作やウェブでの情報発信をしながら、真鶴に訪れた人を受け入れる宿泊施設兼ショップも運営する。宿泊ゲストには1~2時間一緒に町を案内する「まち歩き」をつけており、普通に来ただけではわからない真鶴の魅力を紹介している。今回は、同じくまち歩きを神戸で展開する「シオヤプロジェクト」とタッグを組んで展示を行う。
展示3:ドット道東「理想を実現できる道東をつくる」
Editor: 一般社団法人ドット道東
北海道の東側・道東地域を拠点に活動するソーシャルベンチャー。自費出版の道東のアンオフィシャルガイドブック「.doto」は自社流通のみで発行部数1万部、2020年11月地域コンテンツ大賞にて「地方創生部門最優秀賞(内閣府地方創生推進事務局長賞))」を受賞。2021年、SNSデータから見る「学生の注目企業2021」TOP200。2022年版中小企業庁発行「中小企業白書」「小規模企業白書」掲載。「.doto」第二弾プロジェクトはCAMPFIRE年間アワードにて「北海道エリア賞」を受賞、2022年8月刊行を予定している。
■ 開催概要
名称:山水郷のデザイン2 - 3つのコンヴィヴィアリティ
Design of SANSUIGO 2 - Three cases of Conviviality
会場:GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1新国際ビル1F)
会期:2022年 7月15日(金)- 8月14日(日)期間中無休
時間:11:00-20:00
入場無料
ディレクター:井上 岳一(株式会社 日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト)、
藤崎 圭一郎(東京藝術大学教授・デザイン評論家)
展示協力:株式会社うなぎの寝床/真鶴出版/一般社団法人ドット道東
会場デザイン:MINGLE DESIGN OFFICE
施工:株式会社デエク
主催:公益財団法人日本デザイン振興会
■ ディレクターメッセージ
「山水郷とはなにか」 井上岳一
大都市圏からIターン・Uターンして、地域に根差した暮らしをする若者が増えています。
興味深いのは、地方の中でも、都市部より、自然豊かで古くから人が暮らしてきた町や村が好まれていることです。そして、それらの町や村では、若者達が持ち込む新しい風を受け、創造的な変化が生まれています。女性や若者の活躍が目立つようになり、土地の資源を生かした独自の取組みが生まれ、子どもが増え、笑顔が溢れ始めている。過疎や地場産業の衰退で元気を失っていた町や村が、ここに来て息を吹き返し始めているのです。
拙著『日本列島回復論』では、自然の恵み豊かで、人が長く暮らしてきた地域のことを「山水郷」と呼びました。自然や土地、すなわち山水と深く関わりながら暮らしと仕事が営まれてきた場所(郷)の、生きる場としてのポテンシャルの高さに光を当てたかったからです。生きる場としてのポテンシャルが高いからこそ、変化の余地も大きく、実際に創造的な変化が生まれている。次の社会のモデルになるような取組はこういう場所から始まるのではないか。そう直感し、始まりの場所にはふさわしい呼び名をと思って、山水郷と名付けたのです。
山水郷に創造的な変化をもたらしている人々の活動には、必ずと言っていいほど、よく練られたデザインがあります。そのデザインは、しかし、デザイナーのイノベーティブな感性に頼った個人的なデザインと違い、その地域の人や山水と対話し、協働する中で生まれる集合的なデザインです。それは地域を地域らしく輝かせるデザインです。視座の捉え直しや、新しい解釈も施しながら、地域の本質に光を当て、地域に新しい日常をもたらすデザイン。それが「山水郷のデザイン」です。
山水郷のデザインの現場を巡る中で浮かんできたのが、コンヴィヴィアリティという言葉でした。「共に生きる」を原義に持ち、宴会や陽気さという意味もあるこの言葉を、思想家のイヴァン・イリイチは、関わりの中で育まれる個の自由や生き生きとした喜びという意味で用いました。そして、コンヴィヴィアルな世界の回復こそが、産業化され過ぎた現代社会の桎梏から逃れるための鍵だと主張したのです。
山水郷のデザインは、コンヴィヴィアルな世界を生み出すデザインです。今回取り上げた地域での実践を見れば、きっとそのことを実感して頂けるはずです。
本展開催に寄せて 藤崎圭一郎
本展では、北海道・関東・九州の3つのケースをとりあげる。今回、私たちディレクターとして注文したのは、大まかな企画趣旨のみで、各コーナーの展示に関しては、ドット道東、真鶴出版、うなぎの寝床にキュレーションをお任せした。この3つはそれぞれの地域に根ざしながら「まわる→まなざす→つなげる→つたえる」を行ってきたプロたちである。地域を駆けずりまわり、魅力を見出し・見直して、価値をつなげて編集し、冊子やウェブや店舗などで、地域の魅力と価値を世に伝えてきた。
道東はオホーツク、釧路、十勝、根室で構成され、九州と同じくらいの広さをもつ。人口は90万人弱。ドット道東は、この地域を愛する若きクリエイターたちが、厳しい自然環境のなかで強く生きる人たちを駆けずりまわってつなぎ合わせ、エンパワーしていくメディアである。
神奈川県真鶴町は「美の基準」という1993年に制定されたまちづくり条例をもつ。美の町といっても、そこにあるのは何の変哲もないような日常的な風景である。出版社でありながら宿も経営する真鶴出版は、まちあるきをしながら、人の営みの細部に宿る美を見出すまなざしを育む活動を行っている。
福岡県南西部の筑後地方(本展では“ちくご”と表記)は、久留米市、大牟田市、柳川市、八女市、筑後市、大川市などからなる。うなぎの寝床は、八女市に拠点をもち、久留米絣やゴム加工製造など伝統的な技術から近代産業まで、ちくごに地域に根ざしたものづくりの再発見・再編集を行ってきた。展示からは彼らの文脈を深く読みとる力が感じられるはずである。
「まわる→まなざす→つなげる→つたえる」の行き着く先はまた「まわる」こと。解像度の高いまなざしによって見出された文化価値がまわりまわって人の営みを支えていく社会は、サーキュラーエコノミーと共にあるべき、私たちがめざすべきもうひとつの循環型社会である。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 公益財団法人日本デザイン振興会
- 所在地 東京都
- 業種 各種団体
- URL https://www.jidp.or.jp/
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