大気暴露後も優れたアンバイポーラ性を示す有機半導体を開発

合成が容易なワイドバンドギャップの新分子構造

2025年5月15日

 可視光電子デバイスに求められる電子・正孔の両方を輸送可能なアンバイポーラ型のワイドバンドギャップ有機半導体材料は、多くの場合でその合成が煩雑であり、尚且つ大気暴露すると電荷輸送特性が著しく劣化するという根本的課題を有していました。

 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター(都産技研)は、国立大学法人東京科学大学(科学大)と共同で合成が容易で、大気暴露後もその非晶質膜優れた電子・正孔輸送特性を実現するワイドバンドギャップのアンバイポーラ型有機半導体を開発しました。本成果は有機ELなど光電子デバイスの安定性や設計自由度の向上に貢献することが期待されます。

 

 

開発のポイント

◆ 市販原料から3ステップかつ高収率(~66%)で合成が可能。

◆ HOMO準位*:−5.6 eV, LUMO準位*:−3.0 eVのワイドバンドギャップ(2.6 eV)

均一な非晶質膜の形でデバイス応用が可能(ガラス転移温度:79 ℃)。

◆非晶質膜は大気暴露後ほぼトラップフリーアンバイポーラ電荷輸送を維持(12時間以上)。

*HOMO準位:正孔を輸送する経路のエネルギー, LUMO準位:電子を輸送する経路のエネルギー

 

開発した両極性有機半導体材料の分子構造と大気中で測定した電荷輸送特性(TOF波形)

 

論文誌名:ACS Materials Letters (2024年インパクトファクター 9.6)

掲載日:2025年5月12日 (オンライン版)

論文タイトル:An Ambipolar Alkynylborane Compound with Nearly Trap-Free Charge-Carrier Transport under Ambient Air Conditions ※掲載号のSupplementary Coverに採用されました。

著者:三柴健太郎(都産技研、科学大)*, 永田晃基(都産技研),田中裕也(科学大), 飯野裕明(科学大)* *責任著者

DOI:https://doi.org/10.1021/acsmaterialslett.5c00288

関連特許:特許第7372652号

※本研究はJSPS科研費JP22K05074の助成を受けて実施されました。

 

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プレスリリース添付画像

開発した両極性有機半導体材料の分子構造と大気中で測定した電荷輸送特性(TOF波形)

非晶質膜にした1A10Ph

図1. 開発した両極性有機半導体1A10Phの分子構造と設計のコンセプト

図2.大気中(6~12h暴露)、電界強度±0.1 MV/cmにおける1A10Ph非晶質膜のTOF波形。

サムネイル用概要図

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