iPS細胞を用いた免疫細胞治療の共同開発基本合意書を東京大学と締結

メディネット

2015年9月25日

株式会社メディネット

iPS細胞を用いた免疫細胞治療の共同開発基本合意書を東京大学と締結

 株式会社メディネット(以下「当社」)は、この度、国立大学法人東京大学(以下、「東京大学」)と共同開発基本合意書を締結致しましたのでお知らせいたします。本共同開発基本合意書締結に基づき、当社は、東京大学医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野 中内 啓光教授(1)と、iPS細胞を用いた免疫細胞治療(CTL)の新規治療技術の開発を行います。

 免疫細胞の一種である細胞傷害性T細胞(以下「CTL」)は、がんやウイルスなどの抗原を認識し、異常な細胞を攻撃するリンパ球の一つです。しかし、がんやウイルスとの長期戦により、CTLが老化・疲弊してしまうことで、その機能を発揮できない状態に陥ってしまうことが課題となっております。そのため、現在では、治療効果を向上させるために、CTLを患者様から一度外に取り出し、体外で増幅させて、再び患者様の体内に戻す治療法(CTL療法)などが行われています。

 中内 啓光教授らの研究グループは、平成25年にCTL細胞からiPS細胞を誘導し、再度CTLに戻すことで、若返らせた状態にするとともに、CTLを大量に得ることが出来る新しい技術開発に成功しました。また、平成27年には、この技術を利用して作製したヒトのCTLを用いて、がんのモデルマウスに投与したところ、マウスの体内で効果的に腫瘍を縮小させることが確認されました。さらに、本治療で起こりうる副作用を抑えるために特定の薬剤を投与することにより、投与した細胞を効率的に消失させることも確認したことを発表しております。そのため、本技術を用いたiPS細胞を用いたCTL療法は、高い安全性を担保しながら効果が期待できる全く新しい免疫細胞治療として期待が高まっております。(2)

 本共同開発基本合意に基づき、新規開発されたiPS細胞を用いたCTL治療の開発を目指し、共同研究を進めることとなります。今回、中内 啓光教授が当該技術と当社のこれまでの臨床応用に係る技術・ノウハウを融合させること、及び当社が保有する商業生産規模のCPF(細胞培養加工施設)を利用することで、臨床応用までの道のりを加速させることを目指し、本共同開発基本合意に至りました。今後、臨床用SOP構築・整備から臨床研究、商業化までのプロセス開発などを共同で検討を進めてまいります。

 

 本共同研究開発を通じて、iPS細胞の特性を活かして若返らせて再生されたCTLを用いるという、これまでとは全く異なった免疫細胞治療の開発につながると期待しています。

以上

(1)中内 啓光教授の略歴

1978横浜市立大学医学部卒業

1978-1979横浜市立大学病院内科研修

1983東京大学大学院医学系研究科修了

1983-1985スタンフォード大学医学部遺伝学リサーチフェロー

1984-1987順天堂大学医学部免疫学研究室助手・講師

1987-1995理化学研究所・国際フロンティア研究システム研究員、造血制御研究チーム・チームリーダー

1993-2002筑波大学基礎医学系・免疫学・教授

2002-2008東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター・高次機能(幹細胞治療)分野・教授

2008-東大医科研・幹細胞治療研究センター・センター長、同・幹細胞治療研究分野・教授

2014-スタンフォード大学 教授(Department of Genetics, Institute for Stem Cell Biology and Regenerative Medicine, Stanford University)

(2)Generation of rejuvenated Antigen-Specific T cells by Reprogramming to Pluripotency and Redifferentiation. Cell Stem Cell. 2013 Jan 3;12(1):114-26.

A Safeguard System for Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Rejuvenated T Cell Therapy   Stem Cell Reports 2015 October 13 Vol. 5 : 1-12.

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